複素インピーダンス
抵抗の電圧Vと電流Iの関係はV=RIで、Rは正の実数である。
では、インダクタンスLとコンデンサCではどうなるか。
正弦波を入力して十分時間が経過した結果を知りたければ、V=ZI、ここでインピーダンスZが出てくる。インピーダンスZは複素数で、jωL、1/(jωC)で回路を解く。電子回路、電気回路では、虚数単位にjを用いる慣例だ。
L,Cに対し、複素インピーダンンスの概念を使わないと、純インダクタンスや純容量しか扱えない。共振の問題も暗記問題となる。
周波数特性を検討するなら、複素インピーダンスを導入しておいて、角周波数2πω=f、時定数Tを導入しておいて、回路をキルヒホッフの法則を使って解く。ω=1/Tである。
「十分時間が経過し」の十分の尺度は時定数Tである。
複素計算を行い、絶対値をとりωまたは周波数fの関数として両対数グラフに描けば周波数特性を計算できる。このグラフはボード線図の振幅特性そのものだ。
なぜjωL、1/(jωC)が許されるかと言えば、発散しない系ではラプラスの演算子sの特別な場合として微分はs=jω 積分は1/s=1/(jωC)が許されるからだ。ラプラス変換は複素関数か畳み込み積分(インパルス応答と深い関連がある)がその背景にある。
大学に入る以前に複素数の扱いは誰もが習っている筈なので、それを前提にすれば最初から複素インピーダンスを導入するのが最善だと思う。
過渡応答に関しては、微分方程式を直接解くか、ラプラス変換で微分方程式を解く必要が生じる。そして複素インピーダンスでの解はその一般解である。
制御理論を学んでいるなら、ラプラス変換で微分方程式との対応も付く。
とは、言いながら、アナログエンジニアはラプラス変換で過渡応答を計算したのは数回しかない。
jωの3次式になると、私は簡単には扱えない。ボード線図上で考えて合成するの一点張り。
大学の学科によっては、複素関数やラプラス変換を学ばない工学もあるだろうから、せめて複素インピーダンスの概念に習熟させるような教育は必須だろう。
今の世の中、電子システム中心の世界だから、センサ(物理現象/材料)と制御とその実現法(回路)を必須としなければ「システム」をきちんと扱うことは難しい。しかし、名ばかりシステム工学科も数多くあるのが現実だ。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
いつもためになるお話をありがとうございます。新しい話題について、楽しみにしております。
こんな時のコメントだけで申し訳ないですが、「積分は1/s=1/(jωC)」 のCは不要ではないでしょうか?
ご確認お願いします。
投稿: Kita | 2011年6月19日 (日) 18時14分
Kitaさん こんばんは
すみません。私の間違いです。今後ともよろしく。
投稿: 5513 | 2011年6月19日 (日) 18時56分