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著作

  • 共著:「次世代センサハンドブック」培風館(2008)、「マイクロセンサ工学」技術評論社(2009.8)
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  • 単独著
    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

専門とする事項

  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

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2011年7月

2011年7月28日 (木)

国民宿舎

普段は予約を取るのが難しい人気の国民宿舎が運よくキャンセル空きで予約できた。

近場の温泉付き国民宿舎。

連れ合いと元気に過ごせる時間は限られていると予想しているが、今回は久しぶりの小旅行。

ここのところ、公私ともにストレスの高い生活だったので、息抜きにはちょうどいいタイミングだ。

一泊二日なので、わが家の家猫は餌と水を十分用意しておけば、動物病院に預ける必要なないだろう。

場所は鵜の岬。日立製作所の発祥の地の少し北にある。

楽しみだが、ここのところ、まだ夜が明けないときに目覚めることが気にかかる。宿で早朝に目覚めたら、朝食時間までの時間がとてつもなく長いだろう。

普段なら、フリーの時間が多いので、適当に朝寝、昼寝が出来るのだが・・・

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2011年7月26日 (火)

ケーブル容量

電子回路の出力と負荷の間が離れているときには、ケーブル容量が問題になる。

扱う周波数に対応する波長が距離に比べて十分小さいときには、ケーブルは分布LCであるにも拘わらず、集中容量として検討できる。

距離が長いとき、このケーブル容量を確定するには、シールドケーブルあるいは同軸ケーブルを使うことが多い。

負荷がインダクタンス性で定電流駆動する場合には、負荷端での電圧が上昇することもある。

汎用OPアンプが扱う程度の周波数帯域ではケーブルは集中容量に見えるので、OPアンプの出力端に直接容量が接続される形になり、OPアンプの出力抵抗とCで形成される1次遅れ回路が追加され安定性を損なう方向だ。

汎用OPアンプでは、容量負荷を1000-2000pF程度まで許容するが、次段が容量性であると発振の危険性が増す。

アナログエンジニアは定電流駆動・インダクタンス負荷で数10mほどのケーブルを使ったことがある。この時には、実ケーブルで実長で回路を校正した。

ケーブル容量は入力側でも問題になることがる。芯線と外皮の間の電位差をなくせば、実効的に容量の影響を消去できる。この手法はシールドドライブと呼ばれ、ある種のセンサ回路では必須の技術である。

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2011年7月25日 (月)

理系のお仕事

優秀なぎ技術者・研究者の減少が叫ばれてから久しい。理系を志す若者も減少している。

しかし、継続的な自己研鑽を必要とする理系職業は果たしてその努力は報われているのだろうか。

私は必ずしもそうは感じていない。世の中は文系人間あるいは技術を放棄した人間が組織を形成している側面もある。

理系の仕事を職業とするからには、自分の専門分野に否定的な視点の言及をすることは自殺的行為となりえる。技術者倫理が喧伝されて久しいが、管理職倫理に類する視点は聞いたことがない。技術者倫理以前の問題として組織倫理があってしかるべきだ。

研究者なら論文:それも数が物を言う。設計者なら特許であろうが、その質はあまり問われない。職務発明に対する報償も不十分だろう。理系的に生きるにはそれなりの覚悟がいる。

世の中は文系的人間の世界、とくに今の日本はそうだろう。

理系のお仕事で、技術の伝承に力を入れても個人的なメリットは殆どない。後続を育てることに対価が殆どないのだ。アナログエンジニアはその意味でおめでたい人間かも知れない。

理科離れを嘆く以前に、理系人間の待遇と地位を振り返って見るべきだ。理系人間が理系であることを捨てなければ、いつまでも使い捨ての駒、便利屋として扱われる。

そこに根本的な理系離れの原因があるように思う。

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2011年7月22日 (金)

ESRと誘電体吸収

理想コンデンサはCV=Q=∫idt (C:容量 V:電圧 Q:電荷 i:電流 t:時間)に従うが、実際のコンデンサの選択に際しては、その寄生素子や定格が問題となる。

ESR(等価直列抵抗)は理想コンデンサCに直列に寄生する抵抗成分rで、インピーダンス:周波数特性を両対数グラフに描いた時、高周波側で平坦部となる部分のインピーダンスである。コンデンサの電極から端子へ至る抵抗成分が主であり、rの値は0.1Ω程度のものが多い。

電解コンデンサでは、電解液の化学特性も影響して低温側で大きくなるとされている。

明瞭な平坦部が認められない品種もあり、直列寄生インダクタンスが寄与して、鋭いノッチ状になることもある。しかし、その深さはESRで決まると考えられる。

積分型AD変換器では比較的理想的なコンデンサ例えば箔電極フィルムコンデンサが使われるが、品種選定を誤ると、数サイクルから数10サイクル以上にわたり変換結果が過去の履歴を持つことがある。

この原因は、誘電体吸収と呼ばれる現象で、等価回路的には、理想Cに並列に長い時定数の抵抗Rpと容量C'の直列回路がCに並列に入る。コンデンサの端子を短時間短絡しても、その後、両端電圧は過去の印加電圧に応じ少し回復してくるのである。

セラミックコンデンサでは誘電体吸収が顕著に認められるものがある。

コンデンサの電圧、電流定格を守ることは第一歩であるが、次の段階ととしてESRや温度特性に十分注意を払って回路設計をしていく必要がある。また、積分型AD変換器で過去の測定履歴で精度が変わる場合にはコンデンサの誘電体吸収を疑う必要も生じる。

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すみません。最近ツイッターがなぜか読めなくなっています。

2011年7月21日 (木)

素子感度

電子回路の頑健性の指標として「素子感度」という概念がある。電子部品のある特性が1%変わった時着目する特性がx%変化するとき素子感度がxであると考える。

抵抗の場合、実質的に大きな引き算を行っているときには素子感度は1以上になりやすい。

しかし、センサブリッジのような回路では、ブリッジの不平衡電圧が励起電圧に比べ相対的に小さいので、各辺を構成する抵抗の素子感度は高い。

このような場合、各辺の抵抗を同種、同一ロットのもので構成すると、種々の偏差要因が相殺されることを期待できる。

対称構造は機械的要素においても重要である。

工学においては、必然性のある頑健な形/構造は通常美しい形となる。これが洗練された工学美であり、単なる受けを狙ったデザインの感性とは異なるだろう。

素子感度は回路設計の1指標にすぎない。

素子感度を考える際には、その部品のばらつきの大きさや特徴を把握しておく必要がある。また、計測手段をあらかじめ考えておかないと実証も困難である。

素子感度は便利な概念であるが、この概念を使い設計するには部品に対する2次特性への理解を深めなければならないのである。

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2011年7月20日 (水)

技術指導という仕事

電源を含む精密アナログ回路が専門のアナログエンジニアは、仕事を受ける際にかなりの事前検討を行う。

この手の仕事は相手の力量・設備、事前に与えられる情報から、どのような仕事になるかを考える。相手の状態を把握し、少なくとも主な分枝は考慮にいれる。

問題なのは、技術指導に際しての事前検討の結果を相手にどこまで伝えるか、これにより仕事として成立するかどうかが決まる。伝えすぎるると、逆に当方からの情報、ノウハウを無償で提供することになってしまう。

技術指導の相手は、本当に当面の課題に困っている場合が多いが、技術力なさゆえに技術の価値も判らないこともしばしばある。

飛び込みの依頼の打診の場合はとても工夫を要する。一方的な「工程」を要求される場合、私が想定する仕事の流れを直接表現すると、多くの当方からの情報提供となりそれで相手が満足してコンタクトが途切れるケースすらある。

自分の力量を知っていただくことは必要だが、情報・技術をただ取りされる危険性もはらんでいるのだ。

いずれにしても、聞くばかりでギャラの話のでない仕事は空振りになりやすい。自分を出し、アピールして仕事に繋げることは、日本では結構困難な仕事である。

仕事量の半分くらいが契約前の検討になる。

技術セミナーにしても同様だ、宣伝用パンフレットの骨格は講演者が作る。羊頭狗肉にならない範囲でできるだけ多くの人に聞いてもらえるように、メリハリをつけて時間配分を考える。この種の仕事も、作業量の半分は講演前に投入するが、最少催行人員に満たないときにはそれで終わり。

依頼が成立する以前の作業は個人としての営業費用的であるがその分を回収することは意外に難しいのだ。

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2011年7月19日 (火)

工業用差圧計

工業用差圧計は四大工業量の温度を除く 圧力、流量、液面が測定でき、計測地点から制御室へ4-20mAの電流信号に変換し信号を伝送できる。

信号は差圧に制御される電流信号として送出されるので、「伝送器」とも呼ばれる。

1970-1980年ころ、各社とも活発な開発が行われた。

若かったアナログエンジニアは、差圧伝送器などの工業計測の電子回路を担当した。

差圧伝送器は、数10Paから数万Paの差圧を悪環境で、高い同相圧力(静圧:~400気圧)の下でも安定に計測できる。このため、耐蝕材料のダイアフラムで接液流体と隔離し、センサ側へ油圧の形で測定圧を伝える。この部分は高度に対称形に製作されており、圧力差のみをセンサに伝えることができる。

また、フルスケール圧力は数倍から10倍程度以上調整でき、部分目盛も可能なように作られている。防水はもちろん防爆、耐誘導雷仕様のものもある。

現在は、温度センサ、圧力センサ、静圧センサをMEMS手法で一体製作し、マイコンで補正演算を行って、温度影響、静圧影響などを補正するスマートセンサ方式のものが多いが、伝統的な静電容量式のものも健在である。

各メーカーとも独自色が強く、種々の材料開発も含めその時代の先端技術でもあったので、設計は難しく競争も激しかった。

なにがともあれ、差圧伝送器は工業計器メーカーにとってフラグシップ的な部分側面があり、各社の特徴がでている製品であった。

差圧伝送器は工業計器の王様のような存在であり、信頼性も強く要求された。一つのプラントで1000台使う場合もあるので、高信頼性の水準の維持と性能が求められる機器である。

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2011年7月17日 (日)

暑かった

今日は県アーチェリーの記録会。私としては早起きして、AM8:30の集合に間に合わせた。

最近は本数を射っていないし、この猛暑。熱中症になったのでは様にならない。途中、棄権も覚悟でとにかく射場へ行ってみた。

参加者は一的二人の9人。小学生の相撲大会が隣で開催されていて、付き添いの大人が射場近くへやってくる。ロープを張って、立ち入るな!の意思表示。

6射練習(プラクティス)+2×36射70mの70Wラウンド。後半、引き直しが多く不要なところに力が入っている。着弾は全般的に右下に外れるケースが多い。押手(左手)が安定していない証拠だが、照準は変えない。結果は72射503点。

県で女子No1のIさんは512点、女子の最長競技距離なのに、しかも、私は複合弓なのに勝てない。

ともあれ、この暑さで2時間半持ちこたえた。梅雨明け後、初めての70mW。

体力はともかく、集中力は何とか続いたので満足、満足。

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2011年7月15日 (金)

温度係数

021 大きな温度係数を持つ材料の特定の物理的性質の温度係数は、基準となる温度点を明確にしなければ、その数値は見かけ上変わってくる。

0℃でA0、100℃でA100=A0×(1+αT)の形で表現される物性値Aの25℃付近での温度係数を計算してみよう。

A25=A0×(1+25α)であるから、25℃の物性値A25を基準とした平均温度係数α’は次式で計算できる。

α’=(A100-A25)/(A25×75)=α/(1+25・α)

である。α=4400ppm/℃なら(1+25α)=1.11であるから、25℃を基準とした温度係数は4400ppm/℃の1/1.11となり、3964ppm/℃となる。

高い温度係数をもつ材料は線形とは限らない。白金測温抵抗体などでは、表の形で各温度の相対抵抗値が規定されている。

温度係数はppm/℃単位とは限らない。例えば、熱電対ではμV/℃単位で表現される。

多くの材料の複数の物性値は温度や他の要因に支配されるので、正確な物性値の温度係数の測定は決して簡単な作業ではない。

しかも、温度の精密測定は簡単ではないのである。それなりの設備が必要だ。水晶では温度係数の小さい面方位が多く使われるが、温度依存性の大きいカットや2次の温度係数の小さい方位もよく知られている。

温度特性の測定は案外、複雑な要素を含む。そして、広いエリアの温度を均一に保つことは難しく、大型の恒温槽では数℃の槽内温度の違いがあることすらふつうに生じる。

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2011年7月14日 (木)

メタライズドフィルムコンデンサ

μF前後の電子回路用コンデンサの種類としてメタライズドフィルムコンデンサがある。絶縁体/誘電体材料はポリエステルやポリプロピレンが多いが、フィルム+箔電極のコンデンサに比べ体積は、同容量、同耐電圧で約1/10であり、0.1-0.5cm^3/mJ程度である。

同一誘電体材料で相対的に小型化できる理由は、メタライズドフィルムコンデンサには自己回復機能:絶縁が破れたときに、その欠陥部が蓄積されたエネルギーで、薄い蒸着膜が除去され回復するからである。

しかし、メタライズドフィルムコンデンサは使い方を誤ると発火事故に繋がる可能性がある。一つには、信頼性を維持するには適切な電圧と低インピーダンスラインに使う必要がある。自己回復機能を発揮させるためである。また、蒸着膜が電極なので、箔電極フィルムコンデンサに比べて、許容リプル電流が小さい。

大リプル電流状態で使用すると、電極部が過熱する可能性がある。

tanδもやや大きめであるから、Qも劣る。

したがって、メタライズドフィルムコンデンサは中途半端な使い方は危険である。もちろん、うまく使えば高い信頼性の下、小型化を達成できる。

うまい話にはそれなりの理由がある。

震災商売も同様だ。屋根の損傷が多く発生した茨城では関西方面から様々な工事業者が入って、きれいでない(契約トラブルが多い)業者も入り込んでいる。わが家にもそのたぐいの業者がやってきた。後に刑事が確認しに来た。相手の携帯にわが家の電話番号が残っていたものと推察される。もちろん、危ないと感じて契約前に断ったが・・・

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2011年7月13日 (水)

センサ感度の温度補償

センサは少なくとも2点、例えば被測定量が0の状態(ゼロ点)と既知の被測定量を実際に与えて感度校正(スパン)を行う。ゼロ点校正よりもスパン校正の方が一般に手間と設備が必要となる。

民生用のセンサや材料のみで感度を制御できるセンサの一部では、感度校正をしない例もあるが、感度は寸法精度などの誤差要因により多少なりともばらつく。

センサに使われる多くの物理現象は温度依存性を持つので、より精密な用途では感度の温度補正を行う必要がある。

感度の温度補償に際しては被測定量と温度を変えて取得したデータが必要になるので、恒温槽内で被測定量を与える作業をともなう。このことは、センサ感度温度補償を実施するにはそれなりの設備を用意することを意味するので、量産センサでは特に設備産業的な側面を持たざるを得ない。

感度の温度特性が非線形な場合にはもっと多くの温度点でのデータ取得が必要になる。

アナログエンジニアは受動部品のトリミングによって、3次までの感度の温度補償を実現したことがある。遠い道のりであったがうまい解法が見つかり、最小限のデータで校正することができた。

腕力づくの方法では、桁違いのデータ量を扱うことになる。いずれにしてもセンサの温度補償技術は英知の結晶であろう。

しかし、その技術の本質を評価できる人はさらに少数であろう。

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2011年7月12日 (火)

サーマルシャットダウン

半導体は高温になると信頼性を損ねる場合がある。特に電源回路などでは熱設計の不備や過負荷によりトランジスタが高温になると出力を絞り込む方向が安全サイドであることが多い。

過電流防止回路=電流リミッタは普段よく使う手法であるが、温度を検出して主トランジスタを止めるサーマルシャットダウンもICでは採用され、比較的少ない素子で構成できる。

ICでは、と断ったのは、個別部品を使うとトランジスタ間の温度差が問題になるとともに温度検出素子に何を使うかが課題になるからである。

主トランジスタの制御端子(ベース)電流をサーマルシャットダウン回路のトランジスタで温度に依存して絞り込むことで、この機能は実現できる。

あまり温度に依存しなく、かつ室温のベース・エミッタ間電圧VBEより低い電圧をサーマルシャットダウン制御トランジスタのベースに印加しておくと、狙った温度で動作させることができる。動作時のコレクタ電流の変動が少なければ、見掛け上の温度係数-mV/℃は1%くらいまで作りこめるので、IC回路では定電圧源1(他の回路と共用)、抵抗2、トランジスタ1個でサーマルシャットダウン回路を組むことができる。

標準的な3端子レギュレータでは、この方式で行っているICがある。等価回路図をよく読めば、その回路構成を理解できるだろう。

個別部品では、種々の感温素子が使われるが、どうしても外付部品を使わざるを得ないので、感温素子と接合が同一温度にならないので、シャットダウン温度に余裕を持たせる必要が生じる。

また、別の問題として、サーマルシャットダウンを行うことは、高温でそのシステムは機能喪失となるから、その波及効果を装置として明らかにして対策しておく必要がある。単に止めれば終わりとなる技術課題ではない。

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2011年7月11日 (月)

セミナー講師

セミナー屋さんの主宰する有料セミナーの講師を引き受けることはしばしばある。

アナログエンジニアは、基本的に一人で1-3日のセミナー講師を務める。一日6hが普通だから、大学の講義を毎日4コマ連続で行うことになる。結構、集中力と体力を消耗する。

有料セミナーでは、超入門者からかなりのベテランまで混在して受講するので、それぞれの層にいくつかは来てよかった、新鮮な知識が得られたと感じていただく必要がある。セミナーの持ち時間の早い時期に聴衆の力量の幅を把握する必要がある。その中で、普通知られていない講義内容を織り込むことも大切だ。

有料セミナーの受講者は会社の管理職の承認を得てやってくるから、案内パンフレットの内容はそれなりのアッピールポイントが必要だが、書きすぎると羊頭狗肉になってしまう。

実は、セミナー講師の依頼を受けると、宣伝パンフレットを作る段階で講義のかなり詳細部分まで検討するので、準備作業の大半はこの段階でかなりの時間を使うのだ。

セミナーは最少催行人数がそれぞれのセミナー屋さんで決まっているので、満たないときには直前にキャンセルになり、投入した準備時間は無駄になる。

私の分野は比較的枯れた分野(電源を含む精密アナログ回路)なので、不景気になると集客力が落ちる傾向にある。

リーマンショック以来、多くのメーカーは教育費に投資をすることが減少している。

売れる内容の話ができることは当然だが、加齢とともに、集中力が低下する時間帯がでてきているので、あと長くはこの手の仕事を続けることはできないだろう。

お金を貰ってセミナー講師を務めるということは、一期一会の真剣勝負なのだ。そして、毎回新しい内容で講義することになるのだ。

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2011年7月 8日 (金)

抵抗器の温度係数

抵抗器の選択基準の一つに、抵抗温度係数(ppm/℃)がある。一般的に炭素被膜、厚膜抵抗(サーメット)、金属皮膜、金属箔の順に良好である。

アナログエンジニアの回路実験でのデフォルトは金属皮膜抵抗F級1/4Wである。実験段階で解析精度のチェックがしやすいのと、温度係数が±50ppm/℃以下で、回路の温度変化要因を追求するときに検討要因を少なくするためだ。

電子部品の中では抵抗は比較的理想的な素子として考えて扱うが、それでも抵抗温度係数くらいは、考慮に入れたいものだ。

50ppm/℃は100℃幅の環境温度変化で0.5%の抵抗変化となる。しかも、メーカー抵抗値、許容電力に依存して実力性能は異なる。

時として、大幅な電力ディレーティングを行うことがある。この手段は自己加熱による抵抗変化を低減することに繋がる。電力低減を行うと、温度上昇が少なくなるので、抵抗に起因する起動ドリフトが少なくなり、他の電子部品による起動ドリフトが観測しやすくなる。

抵抗温度係数の精密測定は案外難しい。10^-6単位である程度の温度幅での測定が必要だからだ。

低抵抗になると専用の測定器があっても、結構その数値を確かめることが難しい。金属線抵抗(巻き線抵抗)の素線はかなり温度係数が小さいが、実測が量産ベースでは難しいので公称温度係数には余裕がある場合が多い。

感温抵抗では、温度の絶対値の確からしさも重要な要素で、自己加熱の影響を無視できない。

抵抗は負帰還を利用する電子回路の生命線である。

抵抗の使い方で、回路設計者の実力の一端が見えてくる。

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2011年7月 7日 (木)

オペアンプの選択

集積化OPアンプの選択は、目的・用途に応じ選択する。同時に、自社(個人のこともあるが)の標準化された在庫品を優先的に使用することも必要だ。

アナログエンジニアは普段、汎用OPアンプである741互換品を基準に考える。

DC・あるいは1kHz以下の低周波なら、おもに入力バイアス電流とオフセット温度ドリフトに着目する。

バイアス電流IBによる誤差は信号源抵抗Riの積IB・Riが許容する誤差ないかどうかで1次判断をする。反転増幅器形式の回路なら、抵抗を1本追加する程度で誤差をある程度(1/3)低減する手段はあるが、非反転増幅なら直接影響する。

簡単には補正する手段がないオフセット電圧温度ドリフト(μV/℃)と設計環境温度範囲の積が電圧換算誤差を基本的に定める。現在の最優秀の品種では0.1μV/℃typの品種も出回っているが、残念ながら国産品にはない。

バイアス電流は高信号源抵抗の信号をDC的に扱う際に重要な項目であるが、超低バイアス電流のOPアンプは接合型FET初段のOPアンプか、CMOS OPアンプが有力であるが、CMOSはオフセット電圧との両立性などに劣り、私にとっては使いにくい。接合型FETトップのOPアンプのバイアス電流は強く温度に依存するので、注意が必要である。

周波数範囲が広くなると、急激に選択枝が少なくなる。基本的に利得帯域幅積とスリューレートが制約条件となる。多段増幅化して、一段で稼ぐ電圧利得を下げれば帯域は広げられる。電流帰還形OPアンプという選択枝もある。

種々の品種が存在するということは、総ての項目に秀でていてコスト面でも安価なものが存在しないことを意味する。

電源電圧に関しては、大多数のOPアンプは±15V以下が推奨動作条件だから、モノリシックIC OPアンプを使う限りほとんど選択の余地はない。

他の部品も同じだが、2次的な仕様項目を考慮して部品の選択ができる。教科書の理想OPモデルで考えているうちは、部品の選択はできないのである。

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2011年7月 5日 (火)

差圧伝送器

化学プラントや発電所その他工業用途には広く差圧伝送器が使われる。差圧を測ることができれば、温度以外の工業量:圧力、流量(絞りとの併用)、液面、密度、界面などの計測ができる。

差圧計測の機器だが、いわば、計測器の王様とも言える耐環境性・信頼性・精度を持っており、防爆・防水ときには誘導雷にも耐えるように設計されている。

伝送器の名称の由来は、計測信号を4-20mAの電流信号に変えて制御室に正規化された信号を送出するからである。

200気圧以上の同相圧力に耐え、数100mmH2O~数万mmH2Oの圧力差を0.2%前後の誤差で測ることが許される。高感度でありながら、片圧(同相圧力)にも耐える。回路部は-20~80℃の環境に耐え、流体と接する部分には耐蝕材料のものを使うこともできる。

1970-80年代に、日本では精力的に開発がおこなわれ、種々の方式の差圧伝送器が世の中に出た。ひずみゲージ式、差動容量型、振動弦式など各社が自社の独自の方式で実用化して行った。

アナログエンジニアも技術者人生の少なからぬ期間、差圧伝送器の開発に携わり、さまざまな経験をさせていただいた。

材料開発、センサ開発、回路開発など、用途が厳しいだけに測るために捧げられた英知の結晶とも言える。

しかし、近年はあまり新規開発は行われていないようである。一種の枯れた技術となり、どんどん開発経験者が退職して行く段階のようである。

かくして、次第に基本設計力は伝承されなくなる。

枯れた製品では、技術力の本質的な部分が次第に消えていくような気がする。

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2011年7月 4日 (月)

陰のセンサ技術

何が測れるか、原理はどうかの段階は、センサとして研究段階であろう。ほとんど公表されない「陰のセンサ技術」により、その用途、性能、実用性が決まる。

陰のセンサ技術はいくつかある。

センサは基本的に特定の物理現象を発現させるために、種々の材料を使うことが多い。その結果、センサ材料を最終的にどこかに固定しなければならない。そのとき、必ず異種材料の接合が生じる。

MEMSでの主要材料のシリコンでは、ガラス材との接合に陽極接合(アノーディックボンディング)が使われるが、その先、ガラスと土台との接続をどうするかが大きな課題となる。膨張係数差を吸収するために柔らかい接着剤を使えば、工業用途には不向きとなる。りジッドに固定するならそれなりの工夫を要する。

第二の陰のセンサ技術は精密アナログ技術である。アナログ信号処理技術次第で、コストや性能は大幅に異なってくる。

第三の技術は、補償回路である。通常は数倍から数10倍のセンサ性能の向上を行える。補償技術はセンサ構造と密接な関連を持ち、ゼロ点やスパン(感度)の温度補正などが主に行われる。検出量ではなく、電気的特性を活用しての補償である。補償は軽用途ではロットに対して行われるが、より精密には個々のセンサの温度特性を計測し、その都度、補償定数を決める。逆問題なので、知恵の絞りどころである。

近年はデジタル技術を利用し、複数のセンサを搭載し膨大な実測データを元に補正する手段も使われるが、純アナログ式手法も捨てたものではない。

実践においては、学術としてはふつう成り立たない「陰のセンサ技術」が重要とアナログエンジニアは考えている。

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それにしても福島第一原発の水位計どうして2台とも破損したのだろう。工業用水位計はふつう報道されている程度の環境では壊れない筈だ。

2011年7月 1日 (金)

トロイダルコア

トロイダルコアはドーナツ状の形をしたコアで、コアは全周にわたり切れ目なく磁路を作るので漏れ磁束の少ないコアである。

最近は少なくなったが、磁気マルチバイブレータなどでは高透磁・高飽和磁束の材料を使って多数の巻き線を持つトランスが作られていた。

アナログエンジニアは小型のパーマロイ系の箔コアを使い、100kHzで発振させたことがある。絶縁電源を得る目的だったので、1次コイルと2次コイルを離して巻き線した。コイル間容量は2pF程度まで達成したと記憶している。

この方法は、通常の均等巻きの原則に反する手段であるが、目的は達成した。

トロイダルコアを使ったコイルは、インダクション係数(AL値)と許容アンペアターンで主な仕様が決まるので、ギャップ付き分離コアを使うより設計要素が少ない。損失は許容アンペアターンより低く設計すればヒステリシス損を低減できるし、コア材料も高周波用途のものもふつうに市販されている。

トロイダルコアを使ったチョークコイルは比較的漏れ磁束が少ないので、DC-DCコンバータなどでは重宝されている。

少ない巻き数のコイル/トランスであれば、エナメル線を細長い板状の簡易用具を使ってコアの中心孔を必要回数くぐらせればよいので、種々の使用で自作できる。

エナメル線が1mmφを超えると、少し巻きにくいかも知れない。

トロイダルコアに関する書籍と言えば、山村英穂著の「トロイダル・コア活用百科」が有名で、2005年に新版がでている。

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