回路のトラブルシューティング
回路が思ったように動かない時、どのようにして解決していくかは回路屋の腕が試される時だ。そして、極めてテンションの高い作業でもある。
基板を起こしているなら、パターン図を再チェックしてから考え始める。
ユニバーサル基板なら、要所の配線チェック、半田付けの不備のチェックも必要だ。
自分にとって新規な回路形式なら、部品レベルから動作を一段一段チェックし矛盾のない動作をしているか、どうかのチェックから始まる。部品損傷が発生する場合には、まず、連鎖故障を生じないように保護抵抗などを追加し、測定のチャンスを作る。
出力6kWのリニアアンプを作った時には、2人組で数カ月かかった。一旦破損すると、回路規模が大きいので損傷個所は何か所にも及び、修復に2-3日かかることもあった。回路が確定し基板を起こすにいたった時には、RCスナバの定数が、この時には1桁変化した。
今のアナログエンジニアは、連続してトラブルシューティングを行える時間は3時間程度である。極めて疲れる。部品損傷も考慮に入れながらの推理、計測の連続で頭はフル回転、手先は計器のプローブに集中する。幾通りもの想定/推理を交えながらミスを探索するからである。
新人にアナログ回路の原理を教え、特定用途の回路を「設計」&試作をさせるとき、卒研レベルなら足掛け数カ月かかる。会社の新人なら、週単位の時間がかかる。それも適切な時期にベテランが介入しての話だ。
技術指導なら、制約の中で対策まで見出さないと仕事人として評価されない。
回路のトラブルシューティング、とくに複数の原因があるときには、理詰めでのチェックが有効である。カット&トライではとにかく収束が遅いのだ。
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コメント
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そういえば、大学の教授が教授になる前、アルバイトで基板修理をやっいたときの話をしてくれた。完成基板の故障なので、回路設計に誤りはなく、どれかの部品が壊れている。どれが壊れているかわからないので、部品を順次交換。壊れた部品が交換されると基板は正常になる。修理代はその交換部品全部で請求とのこと。この教授に修理を依頼した人はだいぶ高い修理代を取られたことになる。
投稿: 非国民 | 2011年9月12日 (月) 07時14分
完成基板の修理は易しい方ですね。回路不調の様子が判れば、回路のどの辺が怪しいか見当がつきそうなものですが・・・。動くことが判っている回路なら損傷箇所はかなり絞れそうだ。いまでは、基板単位での交換、サービス要員も技量が落ちているし、そもそも修理を前提にした設計になっていないものも多くある。
投稿: 5513 | 2011年9月14日 (水) 07時01分
非国民はハイビジョンの一部を作っていたときがあった。論理回路のかたまりで、もう町の電気屋さんには部品交換で修理できるレベルを超えていると思った。これは基板交換で対応するしかない。しかし、基板交換だと、基板の値段が高くなる。家電は最低部品保有年数があって、その期間は修理に応じなければならない。工業用はさらに長い年数のサービスがいる。いっそのこと、1年たって壊れたというお客さんには新品で高機能の製品を支給した方が安いのではと思った。それを突き詰めると、もはや修理はせずに、新品を支給するという前提で設計するのもありかなと思う。
すると、そもそもサービス要員がいらなくなる。設計も初めから修理なんか考えないからコストダウンになる。
それにしても思うのだが、部品屋さんも、すぐに部品が保守部品になり、廃品種になる。修理を前提にすると、これも対応しなければならない。安全を検討し、場合によってはEMC試験まである。EMCなんてやったら、コストは何十万円だ。製品メーカとしてはたまったものではない。
ところで、RS-232Cのないパソコンがあった。でもソケットと取り付け金具を買うと、RS-232Cがつながる。EMCは標準状態のテストだから、これだとRS-232Cに周辺機器をつなぐ必要がない。つまり合格しやすい。海外メーカだが、なかなかうまい方法を考える。非常に合理的だ。外資はだいたいが経済合理性を考える。これは日本メーカも見習った方がよい。
外資は福利厚生がいいが、これは別段、気前がいいわけではない。福利厚生費として支給すると、それは会社の損金で落ちる。給料を減らして、その分、福利厚生費で支給すると、社員も税金を払わなくて済むし、会社も社会保険料の会社負担分が減る。この経済合理性を追求する外資を少しは日本の会社も見習った方がいい。
投稿: 非国民 | 2011年9月14日 (水) 23時15分
EMC試験は手間とコストがかかりますね。私はどちらかと言うと、電磁波の被害者側になることが多かった。
経済合理性は日本の会社はさることながら、政府・自治体もある程度は考えてほしいものだ。
投稿: 5513 | 2011年9月15日 (木) 16時31分