矢速
洋弓には国体などに出場できる通常の弓:リカーブボウと国体の競技種目でない複合弓:コンパウンドボウがある。
リカーブボウは、ハンドルを起点としたフックの法則に近い形の力F-引き長さS曲線をもつ。弦のハンドルの高さから測った弦の位置:ストリングハイトから、フックの法則の直線に漸近するF-S曲線である。ストリングハイトは約20cmくらいで、ハンドルからの引き長さ:ドローレングスは男子で65cm程度である。従って、弓のリムに蓄えられるエネルギーEはF-S曲線の面積で決まり、引き尺の短い人は同じ最大の張力でも少なくなる。
矢の運動エネルギーはmV^2/2であるから、矢速はリムの効率ηとして、
2Eη=mV^2となる。ηは最近の競技用の弓では0.9程度あり改善の余地は少ない。
矢の重さは、材質にもよるがアナログエンジニアの矢で17g程度である。競技用の矢の重さは大きくは変わらない。
非力で小柄な女性アーチャーの場合、Sが少なく、ピークFも小さいので最軽量の矢を使っても、矢速は遅く秒速50m以下である。この程度の矢速で女子の最長競技距離である70mを射つと、打ち上げ角は5度を超える。矢速が遅いと弾道は高く、飛翔時間も長いので各種の誤差や外乱の影響を受けやすい。
一方、カムとケーブルを使ったコンパウンドボウでは、引き始めから速く最大張力になり、構えの態勢まで引くと、最大張力の1/2~1/3にまで落ちる。従って、コンパウンドボウでは、同じ最大張力でも蓄積エネルギーEはリカーブの1.5倍程度ある。この結果、私の矢速は70m/sを超えている。
コンパウンド派の人の中では60ポンド近い最大張力で、かつ重い矢を使う方がいる。このような方の矢速は80~100m/s程度だろう。
非力な競技者でも打ち上げ角が40-45度の状態でミスショットすれば、200m程度は飛ぶ。したがって、ドローイングの時にも通常の射角以上の姿勢を取ることは危険な行為である。
『人気Blogランキング』の「自然科学」部門に参加しています。今日も貴重な応援の1票をよろしくお願いします。【押す】
« 放射性廃棄物処理 | トップページ | 電圧制御電流源 »
「アーチェリー」カテゴリの記事
- 和弓と洋弓の違い(2012.03.07)
- インドアアーチェリー記録会(2012.02.26)
- 複合弓の張力(2011.12.10)
- 照準器の設定(2011.12.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント