プッシュプル形コンバータ
絶縁型プッシュプル形コンバータは、某電源ハンドブック第2版によれば「トランスが直流励磁される問題点があり、殆ど用いられない」との記載がある。一方、ハーフブリッジ形方は「直流励磁しにくい、トランスの利用効率が高い」とも記載されている。
アナログエンジニアはプッシュプル形を幾度も使っている。好んで使っているとも言える。
理由は簡単である。プッシュプル形は2個の主スイッチが同時オン(クロスカレントコンダクション、CCC)さえさせなければ、正確な設計が可能なのだ。したがって、設計上の問題点が明白なので、それさえきちんと設計できればすんなりと製品化まで持って行ける。
もう一つのポイントは主スイッチに並列ダイオードがないと、バイポーラトランジスタでは軽負荷の時に主スイッチに過電圧がかかる。パワーFETなら自動的にこの位置に寄生ダイオードがつくので問題は生じない。
プッシュプル形はフォワードコンバータの回生巻き線側もスイッチする方式と見ることもでき、しかも、フォワード形とは異なり±双方向に対し低インピーダンスの出力を供給できるのだ。
ハーフブリッジ形コンバータの方は、私からコメントするなら、主スイッチに並列に入るコンデンサに全電流が流れるので、そのコンデンサに適する部品が少なく選定が難しい。部品の性能の問題なので簡単には自力解決がやりにくい問題がある。解析もプッシュプル形より難しいといういやらしさがある。
ちょと部品を追加すれば、プッシュプル・フライバックコンバータと言える回路方式も成立し、昇圧比200倍ていどが一段で可能なのだ。実用したこともある。
ハンドブックは数10人の執筆者が監修者と章主査のもとにまとめ上げて本になるケースが多いと聞く。監修者がしっかりしていなければ、章間で意見の違うこともあり得る。
私の場合は、自分の名前を間違われた。これは許すわけにはいかない。そこで、出版社に違う名前だから、名前が訂正されるまでは私は執筆の責任を取らないし、在庫品も含めて名前の訂正を申し入れたこともある。
ある回路方式を「ほとんど使われない」などと否定形で表現することはあまりにも著者として軽率である。否定は一例の実用をもって、その表現の不適切を証明できるのだ。
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