オシログラムはオシロスコープで記録した電子回路の波形図を指す言葉だが、デジタル時代になって以来、記録して(解析しないで)終わってしまうケースが多く見受けられる。
インスタントフィルムで撮影していた時代では、フィルム代が相対的に高価だったので、オシロスコープで観測した波形を、手書きスケッチすることが多かった。
一見、時間の無駄に見える波形のスケッチは、波形を計測するエンジニアが波形を詳細に観察し、その特徴点を定量的に把握するために必要な時間でもあるのだ。
例えば、スイッチング波形:周期、オン時間、オフ時間の数値を波形図に添えて書く。
そしてSWの際に生じるスパイク波形の出る位置の記録、オン時のベースラインのわずかな傾き、前縁、後縁にでる有限の時間、波形の最初と最後に出る事のある振動波形、必要があれば、時間軸を拡大しリンギングの周期、減衰の模様などを書き込む。
いまは、そのような波形の特徴点を調べることなく、記録媒体に残してそのままとなるケースがほとんどである。
波形のスケッチ力は、観察者の技術力の賜物である。
アナログエンジニアは、単に、アナログオシロへのノスタルジーを語るつもりはない。
きちんとした訓練を自己に施さなければ、見えない世界が多くある。
伊達に、アナログオシロそれも高速ではない安価なオシロを使っている訳ではない。
20MHz程度のオシロスコープは帯域が狭いだけに、ノイズレベルが低いのだ。そして、DCレベルのシフト機能を使えば画面の1/1000は楽に分解できる。デジタルは、サンプリング周波数が高くいのでS/N比が悪い。ほとんどの場合、振幅方向の有効画素は256しかない。しかも、±1ドットは常時、ふらついているので、画面縦軸の1/100のノイズを判定できない。
サンプリング周波数以上の周波数成分が含まれていると、サンプリング周波数と信号の高周波成分が低域側に折り返されてくる。例えば、スパイクの高さが周期的に変動する場合、デジタルでは本当に生じているかどうかの判定は難しい。
アナログオシロではトリガが安定にかからず、多重書きの状態になることもあるが、これは欠点ではない。その現象が観測されれば、トリガレベルにした電圧が不規則に変動している場合もある。
いまはほとんど見かけることのないストレージオシロ、これも基本的にアナログオシロスコープで単発現象を観測するに適した機材である。
精密にアナログ回路波形を観測するには、まだまだデジタルオシロは不十分な性能しかない。性能がでる必然性は何もない。
アナログオシログラムをデジカメで電子データと残せる今は特にそうだ。
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