回路シミュレータ考
アナログエンジニアは普段はプロ用の回路シミュレータSPICEを使っているが、最近、無料かつ回路規模無制限のSPICEを試している。
基本的な使い方は同じであるが、回路図入力のやり方、表示方法の違いなど、マンマシンインターフェースの部分で異なっている。
しかし、教育用としては、十分役に立つレベルの性能を持つものと考える。まだ、その無料のSPICEのフル機能は総て試している訳ではないが・・・。
このような回路シミュレータが無料で使える時代となっている現在、電子回路教育の体系のあり方、教え方は変わらざるを得ないのではないか。
回路シミュレータは、回路構成の選択や回路定数の決定は基本的にしてくれないので、いかにして、設計に必要な知識と技量を教授するかが問われるのである。
回路シミュレータの素子モデルは、基本的に集積回路対応のモデルなので、旧来のhパラメータではなく、ダイオード・トランジスタのモデルは、最初から、少なくとも、pn接合の順方向特性(Vj-Ij)をIj=Is*{exp(Vj/(m*VT)-1} Ij:接合電流 Is:飽和電流、 Vj:順電圧 m:エミッション係数 VT:熱電圧=kT/q k:ボルツマン定数 T:絶対温度 q:素電荷 の式を早い時期に導入した方が良いと考える。
多くの電子回路の大学教科書は、東大および東工大の某有名教授らが、真空管からトランジスタへの過渡期に執筆した本の説明の流れに沿って書かれているが、これでは、現在のアナログ回路で使う設計手法とはかけ離れているし、題材もIC化が進んだ現在にそぐわないものも多く含まれる。
日本だけではないと思うが、実務者が経験を元にして書いた電子回路教科書を使うのも一つの手段かもしれない。
解析ツールは多くある。
その時代、時代に必要な工学的技量はあまり変わっていない。手解析に基づく回路動作の把握力、計測器の使い方、そして、考える出発点となる回路構成の基本的ライブラリを自分のものにすることが重要である。回路設計段階では、見落としが必ずと言ってよいほど発生する。それを自力で判断し、回路構成や、定数を変更する能力が重要である。
「温故知新」:今辿りえる古い時代の回路は、その時代における部品の制約下で、精一杯の工夫が織り込まれた回路設計となっている。その技量のレベルは今も昔もほとんど変わっていない。
電子回路教育の体系は変わらなければならない。それは教授者が本当の実務の回路設計に習熟している必要があると私は考える。
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コメント
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アナログエンジアさん、こんにちは。
Spiceは、私も結構使います。もっとも助かるのは、電流を観察できることです。実回路では、電流を知ることは場合によりますが、まず無理。回路図から流れる電流を読み取ることが出来れば、そこそこの解析能力あり。ですね。
後、ラプラス演算子も良く使います。システムの記述が線形で近似できるときなど、重宝しています。XXとSpiceは、使いようですね。
(・v・)/
投稿: uA709 | 2012年2月 9日 (木) 11時26分
uA709さん こんにちは
電流を測らない電子回路屋さんは結構います。配線を切るなどして、電流計を挿入するか、既知の抵抗の端子間電圧を測り、オームの法則で逆算するだけなのに。意外に測っていない。インダクタンス電流などのパルス波形はなおさらです。
投稿: 5513 | 2012年2月 9日 (木) 12時09分