熱電対温度計
昨日の午後早い時間帯にツィッター上でリンクされていたサイトで、福島第一原発の温度上昇のデータログを見た。
一時間毎のデータをみると、緩やかに炉内温度が報道されているように、次第に上昇しているが、一秒毎の記録データは工業用の温度計としてはかなり大きい(数℃程度)のふらつきがあり、しかも、15℃幅を超えるスパイク状の波形も認められる。
工業用では、温度測定には熱電対が多く使われる。水の測定なら、おそらくはステンレス製の鞘管に収納されて水に接する。したがって、熱時定数は大きく、秒程度のオーダーでは揺らぐことは考えにくい。熱電対の原理から、その構成材料成分が変化しても短周期でふらつく事はないだろう。考えられる原因は、熱電対から制御室まで張られている伝送路の不具合か、そのアンプである変換器の故障が有力である。
3っつのセンサに付与されたID No.は最後の一数字を以外は同一であった。このことは、測定箇所がほぼ同じところを測定し、多重化しているので、その温度がプラント運転の重要情報であることを意味する。
工業用の温度計測では、センサである熱電対や測温抵抗体は互換性があるので、校正できなくとも変換器を交換すれば、そこそこの確からしさで温度測定できる。変換器はセンサから離れた場所に設置できるので、変換器の交換は無理でない筈だし、ふつうは予備の変換器を保有しているものだとアナログエンジニアは理解している。
このような現象が継続して1台だけの温度計測値が異常であれば、まず変換器の交換をするのが普通の計測屋のやり方と私は思っている。そして残る2台のデータを採用しながら異常を示した温度計の復旧を試みる。しかし、交換するために多少の時間がかかるが、チャートにはそれらしい不連続な時間帯は見当たらない。
夜のTVのニュース番組では、熱電対の2つの材質が定性的に示されていた。銅-コンスタンタンの成分だから、JISのT熱電対だろう。
そして、出てきた専門家は明らかに計測のプロではない、原子力プラントの先生である。プラントの全体は知っているだろうが、センサまでは熟知していないだろう。ミスキャストだ。
ニュースに出てくる科学・技術担当の不勉強を感じるとともに、プラントの計装技術の低下を感じさせる内容であった。
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