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2012年3月21日 (水)

電源回路

「電源回路が設計できれば回路屋として一人前」とよく言われる。なぜなら、電子回路の多くの設計課題を含んだ回路であり、低コスト、高信頼性が必要な課題である。そして、電子回路システムの命運を握る回路でもある。

アナログエンジニアは2度にわたり、少ない文献を頼りに独学で電源回路の設計技術を取得して行った。

電源回路は電子装置の総ての電力を扱うので、そのサイズは装置全体の大きさの何割かを占める回路部分である。負荷は大きく変動するので、広いダイナミックレンジが必要で多くの場合、非線形問題となる。

トランスを用いた整流・コンデンサ平滑回路は定性的には簡単であるが、定量的には解析的にその出力電圧すら求めることは容易ではない。トランスの取引条件まで知る必要がある。部分的には、得られない仕様項目を含む。

そして、その後段には安定化電源回路システムが多くの場合付随する。これもまた、難しい課題を含む。

通常、安定化電源回路は2種類に大別される。直列安定化電源とスイッチング電源である。

スイッチング電源に関する本の先がけは、おそらく、「スイッチングレギュレータ」、嶋村弘則著、産報出版(1979.8)ではないだろうか。多分、著者のネミックラムダ社の時代の物。よく読めば、多くの設計課題、各種の設計上の手法も提示されている。

スイッチング電源は、NASAの人工衛星の電源装置を小型、軽量する目的で開発されたものと認識しているが、原典は私は知らない。

スイッチング電源は基本的に、磁性体のコア特性を理解したうえでパルストランスを設計しなければならない。起動上の課題やEMCの問題もあるとだけコメントしておこう。

電源装置は負荷の短絡を当然想定するので、その保護はふつう行う。

電源装置が大きいという技術者、科学者は、現実の電子システムの本質を知らない2流以下のレベルにとどまっている筈だろう。

そして、強電関係の電源システムはさらに大規模かつ想定する事象が多くなる。そのサイズ故に、輸送上の問題も存在する。今の時代、電源システムの理解なくして、科学、電子技術を論じることは困難であろう。本格的な技術、科学議論においては、分野を問わず、電源システムの理解が無ければ、机上の空論となりかねない。

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この記事は、同年齢、理科系の猪瀬直樹東京都副知事への、アナログエンジニアからのささやかなメッセージでもある。回路設計では常に決断を走りながらやらねばならない。

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