著作の意味
自分が技術書の著者になる、それは、伝えたい強い意思が必要である。アナログエンジニアは企業内高専で電子回路を教え始めたとき、実務で経験した手法と在来の本の手法の大きな違いに戸惑った。そして、アナログ電子回路「設計」に必要な視点のある本はほとんど洋書のみであった。
第一冊目の本「アナログ電子回路設計入門」、コロナ社(1994)は、hパラメータに触れつつ自分の設計手法を含め、在来の邦書とは異なる構成で教科書的な体裁で著した。
この本を著するに際しては、多数の恩人の力添えがあって出来上がったものである。
そして人には言えない位の時間を投入した。
本を書くに際しては、さまざまな方から博士の学位を取得することを勧められた。先に博士、もちろん論文博士である。幸い、回路を熟知している指導教授に巡り会えて、約1年で有馬朗人学長名で学位記を取得できた。短期間で論文をまとめることが出来たのは、技術士資格を取る際に、定められた題目を定められた字数で起承転結をつけて書く訓練が出来ていたからである。当時の技術士試験は、6hで約13000字を書く記述試験である。この時間制限と字数は、問題を見て5分で構成を考え、20分で一つの課題に対し答え、5分で誤記、誤字訂正するだけの時間しかない。やり直しは効かないので、論述試験でありながら、リアルタイムのコンサルティングと同じ状況になる。
150-250頁の1冊の技術書は、図表も文字数に換算すれば、15万~25万字程度になる。学位論文の字数より、ふつう、かなり多い。
プログラミングするように全体を構成し、読者に期待する素養から出発して、途切れることなくきちんと先に記載した内容を次の章で発展させていく。おそらく、本の読者の中で、一番勉強し、本を使っているのは著者本人だろう。また、そうでなければ、良い本にはならない。
既に、単独著7冊、ハンドブックの章主査1冊、共著1冊となった。
週末に書店に並ぶ筈の本は、これまでとは異なる文体で書いている。短文、接続詞が少なく、掛り受けが明瞭な形式で著した。
私にとって、「設計」を意識しない「工学」はあり得ないのである。それが物を創ることの意味である。
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アナログ回路やセンサを扱う立場とは、常に、大きな決断を最初に行い、次々と状況/結果を見ながら、決断を継続する立場だ。良い製品を創るためには、猪瀬直樹氏が著しているように、決断力が工学においても必要である。それは、組織に従属する人間には出来ない決断/判断でもある。
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